3 薬学部を袖にして
 
 ミッチャンには時々ビックリさせられましたね。
 特に、折角合格した名北大学の薬学部を袖にして、教育大学に入学するということを、おじいさんから聞いたときには、耳を疑いました。

 おじいさんから、「苦労するから、ミチには先生になって欲しくない」と言われていただろうに。

 先生という職業はとてもしんどいということを、おじいさんやおとうさんやHIDEオジンを見ていて、いやというほど感じていただろに。
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 薬学部に合格したとき、オジンが「病気になっても、薬の心配はいらんな」と言うと、ミッチャンは「お任せ!お任せ!」と安請け合いしていたのに。
 薬剤師の方が金銭的には豊かな生活が約束されるだろうに。

 オジンには改めて言わないにしても、おじいさんやお父さんにも了承を得ないで、自分一人でさっさと決めて、薬学部をキャンセルし、教育大学への入学手続きを済ましてしまったとのこと。

  先生生活は苦労が多いから、薬剤師の資格を取った方が楽な生活ができるだろうにと思ったりもしましたが、学校の先生ほど意義のある仕事はないと常々考えていましたので、「先生を志望するとは、さすがミッチー」と嬉しくなりました。
 ミッチャンのおじいさんも、「本当は、ミチが薬剤師になるより先生になったくれる方が嬉しい」と言い、二人で盃を交わしたことを思い出しています。                                                              

 ミッチャンはよく、「オジンのような先生になるのだ」と言っていましたので、「薬学部を蹴って、先生を志望するとは、さすがミッチー」とビックリしていましたが、実は裏があったのですね。

 高校生バンドのリーダーをやっていた、ミッチャンあこがれの先輩が、教育大学に進学していたということを後から聞いて、なるほどそれもミッチャンが、教育大学へ進学することを決断した大きな理由だったのかと納得した次第です。

 ミッチャンが彼とどのような交際をするようになるのか、とても気がかりでした。
 
 しかし、幸いなこにと言おうか、不幸にもと言おうか、彼が大麻を持っていたとか、吸ったとかの噂が立ち、警察沙汰にはならなかったものの、それを期に彼がアメリカへ留学してしまったと聞いたときには、ミッチャンがとても落ち込んでいて、かわいそうでしたが、おじいさんもオジンもホッとしましたよ。

                                                                     

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