17 心を育てるのは心
子どもの心を育てるのはとてもむずかしいことです。ミッチャンのおじいさんもずいぶん苦労されたようです。
フトしたことから居酒屋で、おじいさんが担任した人と酒を酌み交わしながら話をしました。
彼が言うには、ミッチャンのおじいさんにはずいぶんご迷惑を掛けたにもかかわらず、結構可愛がってもらい心から感謝しているとのことでした。
・ 彼は中学1年生のとき、少年院に送られ、2年生5月に復学しました。
・ 少年院から学校へ帰ってきたとき、2年生を担任していたミッチャンのおじいさんのクラスに入ることを希望したそうです。
(少年院に入る前、何かの機会におじいさんに褒められたとかで、多くの先生のうちおじいさんを覚えていて名前を出したようです)
・ 教頭さんは初め、ディーン・ティーチャー(生徒指導担当)のクラスに入れようとしたそうですが、「ディーンのクラスは絶対いやだ、おじいさんのクラスがいい」と、本人が希望したのでおじいさんのクラスに白羽の矢が立ったようです。
・ おじいさんは、教頭さんから話があったとき断ることもできず、本音はともかくとして、笑顔をもって彼をクラスに迎え入れてくれたそうです。
・ クラスに迎え入れたそのときから、おじいさんの心と彼の心のせめぎ合いが始まりました。
・ 彼は相変わらず荒れた学校生活を続けており、隣の中学校の番長とやり合ったり、オートバイを乗り回したり、授業をさぼって映画館に入ったりして、担任を手こずらせました。
・ あるとき行きがかり上、隣のクラスの担任に怪我をさせてしまいました。
・ おじいさんは、いつもはことがある度に厳しく叱ったり、優しく諭したりしていました。しかし、今度ばかりは彼も悪かったと思っているようでしたので、チャンスと思い、彼を授業後校舎の裏に呼び出して徹底的に叱りつけました。
「今度のことは絶対に許せん。ぶん殴るから踏ん張れ」
「一方的に殴られたという思いが残ってはいけないから、まず初めに、わしを一発だけ殴れ。それからおまえが殴られる番だ」
・ 当然ながら彼はおじいさんを殴ることができず、ちゅうちょしていると、突然おじいさんから一発かまされたので、弾みでおじいさんの頬を平手で殴ってしまったそうです。
・ 続いて彼はおじいさんから鼻血がでるほど殴られました。
おじいさんから渡されたハンカチで鼻血をふき、おじいさんに連れられて食べに行ったラーメンの味は生涯忘れることはないと彼は話してくれました。
心を育てるのは心 |
ミッチャンのおじいさんは常々、
「体罰では、決して心は育たない。心を育てるのは心をもってするしかない」
と言っていました。
そんなおじいさんが、生徒に手を挙げたということは後にも先にも、居酒屋で出会った彼に対してだけだったでしょうね。
おじいさんが彼を殴ったことは、居酒屋で彼の話を聞くまで、知りませんでした。
もちろんミッチャンも知らなかったでしょう。
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