15 心にとどく指導

 「HIDE先生ちゃっと来て(急いで来て)」と、隣のクラスの女の子がオジンを呼びに来ました。オジンが新任で3年生を受け持っていたときのことです。
 学年主任の川島博美先生(故人)がクラスのやんちゃボーイHくんをがっちり抱きかかえて、子どもたちに呼びかけていました。
「先生も濡れてもかまわないから、だれか、Hくんと先生にバケツの水をぶっかけなさい」

 クラスの子たちはひるんで、だれも水をかけようしないので、川島先生が、
 「だれもかけないなら、隣のHIDE先生を呼んできて」と、女の子に頼み、
 オジンの出番となったのです。

 訳も分からず、オジンはバケツの水をHくんにぶかけました。川島先生もずぶ濡れです。
 後で聞いてみると、Hくんが掃除中に女の子にぬれたぞきんをぶつけるなど、いくら注意しても、いたずらのし放題なので、川島先生が強硬手段に出たとのことのでした。

 オジンは、川島先生のHくんに対する指導方法について、びくり仰天するとともに、川島先生に頭が下がりました。

 
先生もびしょ濡れですから、体罰と騒がれることはないですよね。 

 「先生もびしょ濡れ」の川島先生は、子ども思いの優しい先生でした。
 もちろん保護者からも抜群に人気がありました。

 先生は、Hくんをつかまえて、子どもたちに水をかけなさいと言う前に、Hくんの着替えを家から持ってきて用意していました。
 ご自分も濡れてもいいように、古い体操服を着てHを抱えるなど用意周到でした。
 とても優しい川島先生が、目をつり上げて行動に出たのですから、さすがのHくんも参っていましたね。
 
 「水かけ事件」後も、Hくんのいたずらは結構続いていましたが、川島先生が「Hくん」と呼びかけると、いたずらをやめるようになりました。
 おそらく、Hくんは成人してからも「水かけ事件」のことは、忘れなかっただろうと思います。

  鬼手仏心。優しい先生が真剣にしかると心に響く

          

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